[2012.06.19]エコツアーカフェTOKYO47
NPOグリーンウッドと奇跡のむらの物語
~1000人のこどもが限界集落を救う!~ヨソモノNPOが「地域から学ぶ」「暮らしから学ぶ」で自然体験教育活動によって、人口2,000人の泰阜村を「奇跡の村」にしたNPOグリーンウッドの辻英之さんに、その秘訣やこれまでの苦労、これからの目標をお聞きします。
「わしゃ、生まれ変わったら教師になりたい」。長野県の南部に位置する泰阜(やすおか)村再奥の集落に住むおじいまの一言が、過疎山村が生まれ変わる号砲でした。26年前に、村の論理にもみくちゃにされながら始まったヨソモノNPOの山村留学。その山村留学が、疲弊しきった山村に奇跡の教育旋風を巻き起こす!
これといった観光資源もなく、高齢化と人口減少に悩まされ、一時は「十九世紀の村」と揶揄されたこともあったコンビニもない村。しかし今では、「何も無い」この村に夏になると、たくさんの子どもたちがやってきて、一気に町民の平均年齢が下がります。暮らしの中に学びの原点を求めるグリーンウッド流のキャンプでは、「暮らしから学ぶ」という理念どおり、子どもたちはここで「生きる力」を育み、ひとまわり逞しくなった姿で家に帰っていくのです。
「山村」「教育」「NPO」という、誰がどう考えても「食えない3点セット」を、グリーンウッド自然体験教育センター逆転の発想でビジネスとして成立させた軌跡、行列ができる「信州こども山賊キャンプ」の人気のヒミツにも迫る。
これから地域づくりを行おうとする地域の人びと、子育て中の親御さんや教育に関 わる人びと、新しい生き方を模索する若者の皆さん、ぜひご参加ください。
【つじ・ひでゆき】 信州のへき地・泰阜村に移住して18年。山村に根ざした山村留学や自然体験教育キャンプ等を進めることを通して、「何もない村」における「教育」の産業化に成功した。村の暮らしの文化に内在する教育力を信じぬき、子どものみならず青年や地域住民など、関わる人々すべてに学びがある質の高い体験活動の提供をめざしている。現在、当該NPO代表理事の他、立教大学、飯田女子短期大学の非常勤講師も務める。著書に「奇跡のむらの物語 ~1000人のこどもが限界集落を救う!」(農文協)。福井県出身。一妻二男一女一犬。
長野県の天竜川の源流に近い場所にある、泰阜村(やすおか・むら)は人口は2000人を切り、コンビニはおろか、国道すらないので大型バスが入れない。自治体の財政困難を示す公債費比率が夕張7位につけて泰阜村は10位というほど(2011年度は16位と回復している)。村の若者は出て行くばかりだといいます。
そんな泰阜村で、今回のゲスト辻英之さんが代表理事を務めるNPO法人グリーンウッド自然体験教育センターが行なう活動は村を巻き込み、遠くからの若者をひきつけ今では17人の雇用を抱え、村内3位の企業になりました。《教育》《山村》《NPO》の食えない要素を軸にしてもなお、希望ある発展を遂げた泰阜村とグリーンウッドの、決して平坦ではない道のりをお話いただきました。
泰阜村の山村留学“だいだらぼっち”では、食材も田畑で作り、食事も使う食器やイスも子どもが自分で作ったものを使って生活しています。一家団欒の楽しさや、もったいないの本質を身をもって学んでいます。
生活の中で「一番楽しいのは?」そう聞くと、子どもたちは口をそろえて「薪割り!」と答えます。しかし、一番大変なのは?と聞いても「薪割り!」と答えるそうです。
この薪割りに「めんどくさいことが楽しいんだ」という、山村の暮らしのていねいさが表れています。また、子どもたちが使っているのは昨年の子が間伐して薪割りしたものです。さらに自らの手で間伐・薪割りしても、使うのは自分たちではありません。来年やってくる子たちのために作業します。会ったことはなくても、暮らしを支える“薪”を通じて、気持ちがつながっている、とても素敵な関係です。
大勢で暮らしているから、問題も話し合いもたくさんありますが、多数決はとらない。少数意見はつぶさない。もし、まわりから肯定されたことがない子どもが来ても「ここにいていいんだな」と安心してもらえるようです。
昨年の震災以来、福島の子どもも受け入れ、安心して自然の中で遊んでいます。
泰阜村で活動が始まった1980年代。まだ、山村留学や自然学校への理解がない時代でした。そのような状況で、自然の中での自由教育こそ!と信じた、グリーンウッド創設者の梶さち子さんは、「私は嫁に来るつもりで泰阜村に来ました」と村人の前で宣言。集落ごとの自治会の“おつきあい”にも参加し、草刈りや道普請(道路維持作業)にも積極的に取り組みました。辻さんも、寄り合いでは村人の誰よりも早く会場へ行って掃除をし、終わった後は片づけをして一番最後に帰っていくということを続けられたといいます。
そして、村での“おつきあい”をしながら、 泰阜の自然と人を活かしたグリーンウッドの自然体験教育を作り上げていく中で、「わしは職人だ」と子どもを邪魔扱いしていた“おじいま”(おじいさんの意)が、子どもと一緒に炭窯を作ってみると一変して「わしは子どもとじゃないと炭窯づくりをやらん」と言い出しました。「子どものことは何もわからん」そう話していた男性も、何気ない村の自然に喜ぶ山村留学の子どもたちを見て「生まれ変わったら教師になりたい」とまで言うようになりました。
狭くてデコボコの道。何もない村。そう思っていた村の自然を子どもたちが「星がきれい!」「水がおいしい!」と感動するようす、一生懸命村のしごとをする姿に、自分が住んでいた「何もない」と思っていた村の価値を再発見したのです。
村とグリーンウッドとの協働によって質的に変化した地域にねざした教育。地域が元気になると教育のレベルも上がってくる、という相乗効果で、村とNPOの協働スタートの年・1999年を機に、夏休み山賊キャンプの参加者も増え、村への経済効果も右肩上がりとなりました。
そして、嬉しいことに、村にはUターンする若者が増えて、青年団も復活して活気がさらに高まっています。
外からの論理を持ち出すのではなく、もともと村にあるもの・人をていねいに活かすという考えは、“教育”と“地域活性化”の双方に共通する原点で大切なやり方なのだと、腑に落ちました。その結果が、合併を選択せず自律の精神を持った村人と、際立って「他人任せにせず、自分で進路を決める」子どもたちを育ててきた奇跡なのだと思いました。
その奇跡もまだまだ物語は途中のようです。
辻さんは暮らしの文化を守りながら現代にもアレンジしていけるような柔軟な発想を持つ人材を育てることが課題とお話します。さらに、今後の目標についてもお話いただきました。
それは、日本初の「教育で立つ村」。
アツい話に質問も冷めやらず、台風直撃とも思えない熱気に包まれ惜しみながらカフェをクローズ。
まだ終わらない奇跡のむらとNPOグリーンウッドのお話の続きは、書籍「奇跡のむらの物語~1000人の子どもが限界集落を救う!」を熟読するか、もしくは、実際に泰阜村のNPO法人グリーンウッド自然体験教育センター へ足を運んでみて、体感するしかありません!
NPOグリーンウッドと奇跡のむらの物語
~1000人のこどもが限界集落を救う!~
【ゲストスピーカー】辻 英之氏(NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター 代表理事)
【日時】2012年6月19日(火)19:00-20:30
【参加費】500円(飲み物付)
【場所】日本エコツーリズムセンター事務所
東京都荒川区西日暮里5-38-5
※会場を渋谷から西日暮里に変更いたしました
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【お問い合わせ】日本エコツーリズムセンター
TEL:03-5834-7966 FAX:03-5834-7972