[2016.6.30]エコツアーカフェTOKYO89
利用者による環境保全の仕組み
大雪山国立公園・旭岳 ~使えば使うほど環境が良くなる山~ネイチャーガイド事業を行う大雪山自然学校が公園管理業務を受託し、現場スタッフは安全に楽しく創造的に仕事に取り組んでいます。 この活動は国や自治体や市民に支えられています。手法、成果、課題を共有します。
大雪山自然学校は国立公園でガイドや子供キャンプをしている利用者です。その利用者が、公園管理業務を受託しています。
コンセプトは「利用者による環境保全」。
利用者が「より良く使う」ことで、ゴミが落ちてない状態や登山道が荒れない状態を作り、管理コストの削減に努めています。
これは、問題が発生してから対処するのではなく、問題が発生しないように利用者に動いてもらう情報発信やハード整備が重要なことが分かりました。そこから画期的な発明も生まれましたし、上手くいかないことも沢山ありました。
この活動には年間200人程度のボランティアが関わっています。
2泊3日の活動に参加した人たちは「自己管理力」「コミュニケーション力」「協調性」等が身につくことが分かりました。単なる奉仕活動で終わらない「環境保全活動による人材育成プロジェクト」が現在進行中です。
これらの活動を「地域の価値を作り込む作業」だと考えています。
管理コストが安くて、人が育つ地域は魅力的です。その価値をどのように世界に発信し、どんなリターンを得ていくのか、それをどのように地域に再投資するのか。持続可能な未来に向けた挑戦をお話しします。
※山の日キャンペーン実施中 エコセン世話人も制定に関わった「山の日」(今年からスタートする祝日で日にちは8月11日)のキャンペーンを行っております。国土の7割が山である日本は、まさに“山の民”であり、、紀元前131世紀頃のはるかむかしより、地震や噴火によってできた国土で災害ともに生き続けた民族です。よって、文化や知恵を改めて思う日として推進します。
荒井一洋[あらい・かずひろ]
NPO法人大雪山自然学校 代表理事
1977年生まれ。札幌市出身。ニュージーランド・Lincoln University・Bachelor of Parks, Recreation, Tourism Management(国立公園管理と自然保全専攻)を2000年に卒業。2010年、北海道大学大学院・観光創造専攻修士課程では「エコツアーのコスト構造とシャドーワークに関する研究」を行った。
2000年にNPO法人ねおすに参画し北海道東川町に移住。2001年に「大雪山自然学校」を設立し、エコツアー、子供自然体験活動、大雪山国立公園・旭岳エリアの自然保護対策事業を受託し「利用者による環境保全の仕組みづくり」に取り組んでいる。2015年に大雪山自然学校をNPO法人化した。
★開催レポート★
雄大な自然や豊かな食の恵みで多くの人を魅了する北海道。 その様子を、自身で撮影した写真で開始前から参加者を楽しませてくれたのは道産子の荒井一洋さん。
「大好きだからこそ、その恵みを受けた暮らしを提案し、実践することで持続可能な暮らしを自然体験活動で伝えたい」
大雪山国立公園の公園管理を受託するする大雪山自然学校の運営には、その思いがちりばめられていました。
よくある問題としては、例えば“湿原に立ち入り禁止”であることを知らず、うっかり立ち入ってしまって、管理者が「そこは立ち入り禁止です!」と大声で注意する場面。管理者の立場からすると、自然が破壊されしまうので対応が必要になります。利用者からすると「知らなかっただけなのに。せっかくリフレッシュしに来たのに嫌な気分」となります。一方で、利用者からは、崩壊した木道や草が生い茂る登山道、ごみの放置の現状を見て、「管理がなっとらん!」とクレームが出たりします。管理者は一生懸命に広い公園を管理ようと頑張っていますが対応が追い付かないこともあります。いつの間にか、管理者VS利用者の構図が生まれます。
そこで、利用者が主体となった国立公園での交流による環境保全「Wise Use(賢明な利用)」つまり、“よりよい利用”という海外の国立公園で見られる手法を取り入れました。
それは、「ゴミを拾う、登山道が荒れたら直す」という対処療法ではなく、「ゴミが落ちない状況にする、登山道が荒れない歩き方のルールをつくる」取り組みです。
例えば、
・入山前にマナーのレクチャーを受けさせる、のではなく、お笑い芸人から教えてもらった“楽しく聞ける方法”を取り入れた「聞かなきゃ損する見どころ情報やオススメコース」を伝えることで、“聞きたくなるレクチャー”をつくりだす。すると、みんながマナーを知るし、ゴミは捨てちゃいけない監視体制ができる。
・近自然工法という環境負荷が少なく、かつ登山者が好んで歩く登山道整備によって、多くの登山者が道を外れることなく歩き、周辺環境が荒れづらい状態をつくる。「立入禁止!」の立て看板による規制でなく、人が心理的に立ち入れない環境を整える。
・利用者に、道の補修用の石を1人1つだけ担いでもらうことで、多くの方々が協力する状況を作るとともに、作業に参画した人たちには責任感が生まれる。多くの責任感を持った人は、監視活動を手伝ってくれる。
・たくさんの利用者がマナーを守っり、訪れる好循環のサイクルを生み出していくことで運営側もモチベーションが上がる!
など、利用者が管理にも責任をもち“よりよく利用”する仕組みづくりを整えたのです。
ここでしか聞けないマル秘トークもあり、あっという間に時間が過ぎた会でした。
参加者からは、「東川に行きたくなった。」「山をみる新しい切り口が知れて、楽しく面白く聴けた」「私も責任を持って山に登る」などの感想を頂きました。
最後に、カワイイてぬぐいをひがしかわ観光協会から頂きました!ありがとうございます。
★エコツアーカフェTOKYO★
利用者による環境保全の仕組みづくり
大雪山国立公園・旭岳 ~使えば使うほど環境が良くなる山~
【ゲストスピーカー】荒井一洋氏 大雪山自然学校 代表理事
【日時】2016年6月30日(木)19:00-20:30
【参加費】800円(※今年度より渋谷店での開催のみ値上げいたしました)
【場所】 モンベルクラブ 渋谷店
150-0042 東京都渋谷区宇田川町11-5 モンベル渋谷ビル