[2012.01.14]エコセン全国シンポジウム2012
エコセンが毎年実施している新春恒例の全国シンポジウム。
今年のテーマは「法律とエコツーリズム」です。
エコツーリズムやグリーンツーリズム、自然学校の活動は、地域を元気にする体験産業として大いに期待されています。しかし、さまざまな法規制が活動を制限し、地域の発展を阻害する事態を招いています。
たとえば、体験活動事業者がお客さんを自家用ワゴンで迎えに行く。これは“道路運送法”に違反しています。
資格を持たず、外国からのお客さんへ外国語でガイドすることも“通訳案内士法”に違反です。
このように体験活動事業を行なうための当たり前のサービスやプロセスの多くが、法律によって規制されていて、知らずにいたことで、注意もしくは訴訟を受けて、痛い目にあうケースも全国に少なくありません。
「法の壁」をテーマに、エコツーリズム・グリーンツーリズム・体験活動を運営している方々に、どのような法規制があるのか、法の壁に行き当たった経験、それらを乗り越えどのように企画・運営しているかをご報告いただきます。
その後、自然学校運営側が注意すべきポイントを公開し、プログラムの組み立てに役立つ奥の手もお話します。
さらに第3部では、エコセンがまとめた法改正への提言をもとに、パネラーと参加された皆さんを交えたディスカッションをおこないます。自然の中や地域で働きたい人たちが地域を元気にできる体験事業が提供できる世の中へ変えていきましょう。
現在もしくは今後、自然体験活動を仕事にしていきたい、田舎で働きたい方、学生の皆さまなど、ご参加をお待ちしております。
エコセン全国シンポジウム2012
「自然の中で働きたい人たちへ~体験プログラムで仕事が出来る社会にしよう」
[きたがわけんじ]環境保護運動の流れから仲間と作り出したアウトドアサポートシステム(以下、ODSS)の代表取締役。ラフティングやシャワークライミングなどワイルドな自然体験と、地産地消の食材を使うアウトドアランチがツアーの醍醐味。
[からんあきひろ]沖縄体験ニライカナイ代表。NPO法人 沖縄O.C.E.A.N.理事。 独自の文化と歴史を持ち、亜熱帯の温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、 心豊かな人の多い沖縄本島中北部での教育効果の高い体験にこだわっている。 その本格体験を行なうにあたっての法への対応についてお話しいただく。
[つかはらとしや]栗駒の自然を活かした冒険教育や体験ツアーを行なうくりこま高原自然学校の若手スタッフとして活躍。水辺の体験活動を行なうイーハトーブ北上川自然学校の代表。東日本大震災発生後は、北上川河口の河北地区にて地域に根ざした被災地支援活動も行なっている。
第1部で共有した事業を事例に、何を注意すべきなのか。それらを知った上でどのような対応策をとるべきなのかをレクチャー。
第1部の報告パネリストとエコセン世話人、そしてシンポジウムに参加するみなさんとともにディスカッションを行います。
全体コーディネーター
広瀬敏通氏 日本エコツーリズムセンター代表理事
パネリスト
岡田康彦氏(公益社団法人日本環境教育フォーラム 会長)
北川健司氏(株式会社アウトドアサポートシステム 代表取締役)
加蘭明宏氏(有限会社ニライカナイ 代表取締役)
塚原俊也氏(イーハトーブ北上川自然学校 代表) ほか
シンポジウム冒頭では、エコセン代表の広瀬さんが実際のエコツアーで起きる法律問題を事例に挙げ、現在の法律がエコツーリズムの活動に追いついていないことを示しました。
事例報告ではくりこま高原自然学校の塚原さんが、自然学校の1軒のログハウスを建てるために、どれほど多くの法律の壁をクリアしなければならないか、解決の裏話を交えながら楽しく説明してくれました。たった2組しか宿泊できない施設なのにリネン室や男女別の風呂を設置させられた話には、会場からも笑い声が出ました。都市部と比べてお客さんの数や回転率が全く異なる山村で宿泊施設や飲食店を整備する場合でも、同じ尺度で法律が適用されることに疑問を感じているという点には納得しました。
(株)アウトドア サポートシステムの北川さんは、ラフティング・シャワークライミングなどのアウトドア活動を通じて生じた、地域での課題などをお話ししてくださいました。法律的にはクリアしていても、地元の同意が得られなければ活動を継続することはのできないという話が印象的でした。
沖縄体験ニライカナイの加蘭さんは、沖縄の新たな魅力を発信するためのプログラム作りを、沖縄県恩納村を拠点に行っています。加蘭さんは法律の遵守を基本として地域社会に貢献する自然体験活動を行い、地域住民や行政の信頼を得てきたそうです。また、現在沖縄の自然体験活動のトレンドとなっている農家民泊と法律の問題を解決していきたいとおっしゃっていました。
法律の専門家である日本環境教育フォーラムの岡田さんは、現在の法律に「業法」が数多くあり、これらの「業法」が現在の自然体験活動を制限する要因となっていることを図解でわかりやすく説明されました。また、この問題を解決するために「業法」を上回る「大業法」を作ることや、あまり知られていない環境教育関係の法律を利活用し育てていくことなど、様々な手段があることを紹介しました。
エコセン代表の広瀬さんからは、自然学校を運営していくうえで行っている「法律の裏ワザ」の紹介がありました。実体験に基づいた、わかりやすい説明には参加者の方の多くがメモを取っていました。「裏ワザは行政ときちんと話し合ったうえで行っているものだが、グレーゾーンである。法律の問題を解決していくために、新成長産業分野の他産業の方とも協力していきたい」とおっしゃっていました。
パネルディスカッションでは、講演を行った5人に加え、今回のテーマについて深く携わっているエコセン世話人の森高一さんに参加していただきました。
エコツーリズムや自然学校に関わっている人たちは一般企業の人とどのように違うのかという話題に始まり、
「農業や林業といった第一次産業と同じように、自然体験活動も労働基準に従って動くことは難しい。そもそも労働基準は都市で働く人のための法律なのではないか」
「しかし、我々も8時間労働でありたいと思っている。そうしなければ、仕事の質も下がるし、リスクマネジメントとしても危ない」
など、パネラーによって求める労働環境が異なっていました。
また、エコツーリズム「業界」を新たに作ることはできないのかという話題に関して
「業界を作り、業法を設置するとしても、エコツーリズムは他業法と重なる部分が多すぎるため、大業法が必要となる」
「『体験』というものにクローズアップして法整備をしていくことが問題解決の糸口になるのではないか。『体験』業界というまとまりを作る」
という、業界づくりを法律へと結びつける意見が出ました。
そこで、法を改正するならばどのような法律にすればいいのかという具体的な話へ進んでいくと、
「エコツアーなどの自然体験活動はまだ開拓が進んでいない分野である。そのため、法律が作られていないと実感している。これから自然体験活動への参加者を増やしていくべきだし、自然体験活動が良いものだと感じる人を増やしていくことが、法律改正の後押しになるのではないか」
「『裏ワザ』を地道に浸透させ『表ワザ』にしていくことも一つの法改正の方法だ」
など建設的な意見が多く聞かれました。
参加者の方からも
「裏ワザを利用していくことで、次第に法律のどこが問題か明確になってくるのではないか」
「法律の問題をグレーでなくホワイトにする方法を改めて考えさせられた」
「法律の中には人の命や安全を守るためのものもあるため、ただ法律を批判するだけではなく、我々が法律に歩み寄る部分も必要だと感じた」
など参考になる意見を聞くことができました。
今後もエコセンは法律とエコツーリズムの問題について取り組んでいきます。ぜひご協力ください。
【日 時】2012年1月14日(土)15:00〜19:00 14:30受付開始
【会 場】日本エコツーリズムセンター
【参加費】エコセン会員:1,000円、一般:1,500円、学生:500円
東京都荒川区西日暮里5-38-5 日能研ビル2F
※山手線の線路沿いの道からお越しください。
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【お問合せ】日本エコツーリズムセンター
TEL:03-5834-7966 Fax:03-5834-7972
【お申込み】下記のお申込みフォームまたは電話、ファックスで
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日本エコツーリズムセンター事務局にお知らせください。
日本エコツーリズムセンターは、Panasonic NPOサポートファンドの助成を受け、この問題の研究を行っています。