[2013.01.16]エコセン全国シンポジウム2013
毎年年のはじめにエコツーリズムに向き合う全国シンポジウム。今年はずばりエコツーリズムの定義を考え直します。日本にエコツーリズムが入ってきて20年。日本のエコツーリズムはどう変化してきたのか。
エコツーリズムが日本に入ってきて、20数年が経ちました。当初は、自然観光を指すツーリズムが一般的でしたが、日本では、持続可能な地域づくりを基礎とする概念として広がってきました。
エコセンでは地域を元気にする活動のもとエコツーリズムを「地域の特色ある自然・文化・暮らしへの理解を深める旅行や交流活動によって、地域の環境保全や産業振興につながる、仕組みづくりのこと。」と定義しています。
エコツーリズムとは単にエコツアーを実施することだけでなく、地域のさまざまな課題を解決するツールとして捉え活動しています。獣害や野生動物との共生への取り組み、法規制への壁への研究・提言、災害復興支援など、一般的なエコツーリズムのイメージでは思い浮かばない取り組みを展開しています。
そこで、2009年に策定した「エコセンが考えるエコツーリズム」をあらためて見直し、簡易な表現で現代日本のエコツーリズムをみなさんとともに再定義していきます。
エコツーリズム・環境教育を実践してきたキープ協会の川嶋直さんやメディアを通してエコツーリズムを伝えてきたエコツアー・ドット・ジェイピー編集人の山中俊幸さん、グリーンツーリズムの人材育成に長期携わり、現在は地域の現場で頑張る加納麻紀子さん、そして、各地で地域を元気にする現場を見て伝えている鹿熊勤さんに話題提供をしていただきます。
ディスカッションタイムでは、ゲストに加えエコセンの世話人も多数参加し、みなさんと一緒にエコツーリズムを再考します。
今、社会に求められているツーリズムの形とは何か、エコツーリズムという言葉が表現できる地域活性化とはどんなことか、そして、エコツーリズムに代わる日本語はあるのか?!
ご参加お待ちしています。
公益財団法人キープ協会 環境教育事業部シニアアドバイザー
[かわしまただし]1953年東京都調布市生まれ。1980年よりキープ協会に勤め、環境教育事業部長、常務理事を経て現職。「自然体験型環境教育/インタープリテーション/野外教育/自然体験活動/環境コミュニケーション/企業と環境NPOとの協働」の企画・運営・プロデュースを専門とする。
著書に『就職先は森の中~インタープリターという仕事』(小学館)、共著に『日本型環境教育の提案』(小学館)、『次世代CSRとESD~企業のためのサステナビリティ教育』(ぎょうせい)、『ESD拠点としての自然学校~持続可能な社会づくりに果たす自然学校の役割』(みくに出版)など。
自然系ジャーナリスト
[かくまつとむ]1960年生まれ。出版社勤務を経てフリーに。アウトドア、環境問題、自然教育、第一次産業、手わざ、地域文化、地域活性化など、自然と農山漁村に接する領域で取材や提言活動を続ける。日本におけるエコ(グリーン)ツーリズムの流れを20年ほど前から取材者としてウォッチングする。情報ラボ『緑蔭風車』代表。立教大学兼任講師。NPO法人日本エコツーリズムセンター理事。著書に『野山の名人秘伝帳』(農山漁村文化協会)、『葉っぱで2億円稼ぐおばあちゃんたち』(小学館)、『はたらく刃物』(ワールドフォトプレス)など。
NPO法人塩谷町旧熊ノ木小学校管理組合 事務局長
[かのうまきこ]神奈川県藤沢市出身。東京学芸大学教育学部卒業後、社団法人農村環境整備センター(現在は、社団法人地域環境資源センター)にて、農村地域における環境教育活動の調査・研究、普及・推進に携わる。2010年7月よりNPO法人塩谷町旧熊ノ木小学校管理組合事務局長。これを機に家族と共に東京都江戸川区から栃木県塩谷町に移住。
エコツアー・ドット・ジェイピー 編集人
[やまなかとしゆき]栃木県出身。雑誌・書籍・新聞・WEBの編集・記事制作、企業広告・商品広告の制作を行う広報のプロ。「子どもも大人も、もっと身近に自然環境に接するようになれば、地球や他人に対してもっとやさしくなれる」という考えから、エコツアーや環境関連情報を発信するウェブサイト上の情報を一覧できる「エコツアー・ドット・ジェイピー」を2003年に立ち上げる。日本エコツーリズムセンター副代表理事
第1部4名のパネリストとエコセン世話人、そしてシンポジウムに参加するみなさんとともにディスカッションを通して、エコツーリズムの定義をつくり直します。
全体コーディネーター
広瀬敏通氏 日本エコツーリズムセンター 代表理事
参加予定エコセン世話人
浅野正敏氏 NPO法人天覧山・多峯主山の自然を守る会 代表理事
梅崎靖志氏 風と土の自然学校 代表
加藤大吾氏 NPO法人都留環境フォーラム 代表理事
進士 徹氏 NPO法人あぶくまエヌエスネット 理事長
辻 英之氏 NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター 代表理事
長与純三氏 シニア旅行カウンセラーズ代表理事
南 修氏 NPO法人白山しらみね自然学校 事務局長
李 妍焱氏 日中市民社会ネットワーク 代表
開催レポート |
全国各地から多くの方にお越しいただきいただき、正月恒例のシンポジウム「エコツーリズムを再考する」を開催しました。
全国から会場に集まった、体験事業者、行政職員、学生さんらは一体どのような関心のもとシンポジウムに参加しているのでしょうか?挙手をお願いすると結果は―。
地域の環境保全(6名)、自然観光(10名)、持続可能な地域づくり(17名)、地域を元気に(8名)、再考(定義を考え直す)(10名)、交流活動(2名)、スピーカーの方たち(2名)―となりました。持続可能な地域づくりについて興味があり、期待を持ってシンポジウムに参加している方が多いようです。 このシンポジウムの多様な興味・関心そして、目的を再確認してからスタートです。
第一部、はじめは自然系ジャーナリストの鹿熊さんです。
釣りやアウトドアの取材を得意とする鹿熊さんは、近年、エコツーリズムという名の便利さと使いづらさ、伝わらなさも感じていました。そこで明治後期以降から、自然環境とライフスタイルを軸とするエコツーリズムなるものの歴史を振り返り、時代とともに勃発または変遷してきた自然と交流活動を体系化し、私たちの頭の中を整理してくれました。大きく括られたエコツーリズム=“自然資源を利用するソフト事業活動”も現在は停滞期にあると言い、これまで生まれ衰退した産業と同じ様に「成熟後に訪れる変革期に次の一手を打てなかった産業は生き残ることができない!」と、集まった人々に訴えました。
その上で、四万十ドラマや在来野菜を再発掘する活動、生きものブランドなど全国で起きている多様な、自然を活用したツーリズムや産業を追うと、これらが次第に持続可能な地域社会づくりへ向かっていく流れがよく理解でき、今後地域での活動を考える上でも広い視野と長期的な視点に気づかされました。
サイト“エコツアー・ドット・ジェイピー”を運営されている山中さん。
労力と時間、アイデアそして情熱を注いで立ち上げたサイトは、「いつ・どこで・○○したい」「夏休みにエコツアーをしたい」という条件検索から、エコツーリズムの活動団体やメニューを探し当てるもの。一般ユーザーの接点を増やし、エコツアーの定着に一役も二役も買ってきました。 立ち上げた10年前からのネット環境の変化は目覚しく、小さな団体も自身のHPを持って発信力が全体的に上がっています。 いっぽう、プログラムを動画発信したり、市のHPをFacebookページに統一して、市の動きを市民に見える化し親しみを持ってもらうなど、サイトの工夫次第で自然と人をつなぐことができる、インターネット現場からの報告でした。
3番目の報告者は、地域の現場に入って活動する加納麻紀子さん。
栃木県日光市と那須塩原市に挟まれた塩谷町の廃校を利用した宿泊型体験学習施設“星ふるくまの木自然学校”での取り組みをご報告いただき、誰もが素晴らしい取り組みだと報告に耳を傾けました。一方で、「地域の人たち自身の“実感”“実態”としての地域活性化につながっているのか?」と冷静に振り返り、行政や地域と協働していくコーディネーターとしての立ち位置を持つ加納さんならでは視点は新鮮でした。
キープ協会の川嶋さんには、本日の議題「エコツーリズムを再考する」についてKP法で説明して頂きました。
エコセンに集まる112人の世話人を含めた、このセンターに集まっている人たちの実体と、“エコツーリズムセンター”という名称が合っていない!という問題提起から始まったこのシンポジウム。いわばシンポジウムの発起人である川嶋さんは、当センター代表の広瀬氏とともに1992年にエコツーリズム研究会を立ち上げた一人です。
今のエコセンの実態と合っている定義は、「地域が直面している様々な課題を、地域に暮らす、訪れる、さまざまな人たちの地域の知恵、試み、具体的には産業、によって、解決していこう、っていう人たち」ではないか。また、よくたとえらえる「観光=ヒカリを観に行く」になぞらえれば、エコセンが観に行く“ヒカリ”は、「新たな時代を切り開く地域や人」なのだ!とし、次のディスカッションにつなげました。
第二部はグループに別れてディスカッションです。立場も年齢も違うチームでエコツーリズムについて考えました。
話し合った内容は発表し、4時間近くやっても時間が足りない白熱と緊張のシンポジウムでした。
あぶくまエヌエスネットの進士さんより緊急提言。高濃度放射能汚染物焼却場が村に出来るため自然学校が廃校の危機に陥っています。みなさんにも意見書を提出するなど出来ることをお願い致します。
【日 時】2013年1月16日(水)15:00〜18:30 14:30受付開始
【会 場】日本エコツーリズムセンター
東京都荒川区西日暮里5-38-5 日能研ビル2F
※山手線の線路沿いの道からお越しください。
【参加費】エコセン会員:1,000円、一般:1,500円、学生:500円
【お問合せ】日本エコツーリズムセンター
TEL:03-5834-7966 Fax:03-5834-7972