[2015.1.10-12]野生動物インタープリター研修会in朝霧高原
動物の生態や人との関わりを題材にしたプログラムとはどんなものか? 野生動物と人との関係性をあらためて見つめ直し、共生を探るインタープリターを育成する講習会2014年度版を開催します。
インタープリテーション(以下、IP)は、触れたり感じたりできるものを通してその背後にあるメッセージや価値を伝えるための技術です。野生動物を素材にしたIPでは、ただ単に野生動物を見せる、あるいは存在を感じてもらうだけではなく、その体験を通して背景にあるもの(「生きものと人とのつながり」「人と動物との軋轢」「乱獲問題」「外来種」など)を伝えることが重要です。
この講習会では、動物の生態や魅力そのものだけでなく、人との関係性や背景をも伝え、プログラム化や地域の課題解決のために行動し、野生動物と人との共生を目指す “野生動物インタープリター”を育成します。
自然学校やビジターセンターのインタープリターの現職員やそれらを目指す人々、猟師や救護ボランティアなど動物に関わりを持つ人、行政の野生動物保護管理の担当者など様々な人がこの講習会に参加してきました。
動物を見せないでも楽しめるプログラムや狩猟体験を通じたエコツアーなど、参加者や身近な野生動物と人との関係性、社会背景を踏まえたプログラム企画・実施できるIPのスキルアップを目指します。
動物との距離が近い日本では、軋轢や乱獲、外来種、傷病鳥獣など課題も多く存在しますが、野生動物との共存のありかたについて専門的に伝える役割を持ったIPはほとんどいません。アメリカの国立公園や鳥獣の保護エリアでは、野生動物と共生するためのメッセージを伝える教育者は研究者と別に存在している専門スキルです。
地域の鳥獣害防止や野生動物保護管理計画に住民への啓発は課題のひとつです。行政研究機関へのヒヤリングによると、複雑化する人と野生動物との関係性を正しく捉え伝えるスキルは、地域ぐるみの鳥獣対策と持続可能で元気な地域づくりのために、野生動物保護管理を計画・実施していくうえでも求められていると言います。餌付け行為や耕作放棄など獣害が起こる背景などを市民へ啓発することは、地域ぐるみの獣害対策・野生動物保護管理を計画する第一歩です。
インタープリターの技術を持つ人にとっては、スキルを活かして社会課題に関わるチャンスともなります。市民に地域課題の理解を図る手段として、野生動物インタープリターが活用されることを願って研修を企画しています。
●学術的・歴史的背景等様々な側面から野生動物を知る
●野生動物と人との関係のかたちのひとつである“狩猟”を体験し野生の恵みを活用する(獣肉・獣皮)
●“伝える”ワークショップから、野生動物と人をつなぐ・人と人をつなぐ
●地域で野生動物のかかわりをもとうとしている人(もっている人)
●マチで野生動物のかかわりに興味をもっている人(かかわっている人)
●人と野生動物というテーマを、他者に伝える役割を担いたい人
●野生動物の恵みを活かす技術を身につけたい人
●野生に近づきたい人(自然に寄り添った暮らしを志向する人)
井戸直樹 |
1976年大阪府生まれ。アウトドア体験と狩猟や自然農などの生活体験を作り上げる“森のたね”代表。富士山麓で地に足をつけた生活を目指し、狩猟&自然農畑に挑戦しながら、ホールアース自然学校でインタープリターとして働く。2009年に第一種銃猟狩猟免許所得。富士宮でぶつぶつ交換市や皮利用の製品開発も手がけ、仲間を広げている。一方、2012年は環境省の地域ぐるみの捕獲推進モデル事業を担い、わな猟技術講習会、ジビエ料理研修などを実施。「自然学校的野生鳥獣対策のススメ~利活用編~」講座など、狩猟の理解促進や人材育成を行い、地域をつなぐ役割も果たす。
[森のたね 代表/ホールアース自然学校非常勤スタッフ] |
青木雄司 |
丹沢大山国定公園のビジターセンターで、インタープリターとして15年の活動経験を持つ。
環境省のすすめるモニタリングサイト1000里地調査の検討委員会として哺乳類調査に関わる。
市民参加による哺乳類調査の可能性を模索している。日本哺乳類学会、日本鳥類学会所属。
著書に「丹沢自然ハンドブック」(共著、自由国民社)、「かながわの自然図鑑〈3〉哺乳類 」(共著、有隣堂)、
「鳥との共存をめざして―考え方と進め方」共著、(中央法規)]
[日本哺乳類学会会員 /モニタリングサイト1000検討委員] |
大橋正孝 |
1970年静岡県生まれ。静岡県の機関としては唯一、野生動物対策の研究に取り組んでいる森林・林業研究センターの上席研究員。学生時代は、北アルプスで、厳冬期-20度以下になる環境下でニホンザルの研究を行う。入庁後は、余暇を利用して県内でコウモリからツキノワグマまで多くの種を対象に捕獲、調査を行い、2006年から研究センターに配属となる。2011年に個体数が急増し被害が深刻化するニホンジカについてプロジェクトチームを立ち上げ、効率的な捕獲技術やだれでも簡単、安全に扱えるわな具やとめさし道具の開発などに取り組む。第1種銃猟及びわな猟狩猟免許所持。
[静岡県農林技術研究所 森林・林業研究センター イノシシ研究チーム] |
小野比呂志 |
1973年茨城県生まれ。日本で草分け的存在のホールアース自然学校で理事を務める。富士山麓をガイドして12年。富士山の森がシカにより荒れていくのをみて、狩猟免許を取得、猟師としても活動する毎日。2005年の環境をテーマとした国際博覧会「愛・地球博」では出展ブースのディレクターや会場内の自然案内ブースにチーフインタープリターとして参画し、自然の持つ様々な魅力や問題を人々に投げかけた。
現在は、田貫湖畔に環境省が設置した公設民営の自然学校第1号の「田貫湖ふれあい自然塾」のチーフインタープリターとして、野生生物調査や展示作成、PG企画実施などを通して、「自然」とくに「野生生物」と人をつなぎ、身近な自然の見方を変えるしくみをプロデュースしている。
[ホールアース自然学校 ビジターセンターチーフ] |
松本美乃里 |
1983年静岡県富士市(旧富士川町)生まれ。大学卒業後、広告企画提案営業やエコツーリズム推進事業の事務局で自然を生かした体験イベントを企画運営、実施を経て、2012年ホールアース自然学校へ。野生鳥獣捕獲推進モデル事業・事務局を担当しながら自身も狩猟免許(わな猟免許)を持つ女性ハンター。日本橋街大學・ニッポン楽部・里の命と食を巡る ジビエと狩猟クラスでは、2014 年春に引き続き、2015 年冬季講座でも講師を務める。
[ホールアース自然学校 女性猟師] |
山口明宏 |
1967年、東京都生まれ。革職人の傍ら、国内メーカー・デザイナー、そして小売店間の様々な交流を円滑に行うため、2010年日本製造者協議会を設立し事務局として活動。皮革販売サイト「革創庫」の運営をはじめ工場見学会の開催では、小学生から百貨店バイヤーまで年間2,000人の見学者に本革の魅力を伝える活動を行う。墨田区ものづくりフェア実行委員、革のまちすみだ会代表を通じて、墨田区皮革産業を動的社会とし価値向上にも努めている。
[山口産業株式会社 代表取締役/MATAGIプロジェクト事務局長] |
開催概要
野生動物インタープリター研修会
【日 時】2015年1月10日(土)~12日(月・祝)
【場 所】静岡県立朝霧野外活動センター(富士宮市根原1番地)
【参加費】エコセン会員:27,000円、一般:28,000円
(現地までの交通費、宿泊・食費、交流会費は含みません)
【主 催】NPO法人日本エコツーリズムセンター
【協 力】森のたね
【申込み】下記の申込みフォームよりお申込ください。
【お問合せ】日本エコツーリズムセンター
TEL:03-5834-7966 Fax:03-5834-7972
講習内容(予定)
狭い国土ながら多くの哺乳類が棲息する日本。学術的に見ることで浮かび上がる動物や動物相を学びます。
温度変化に反応してシャッターを切るカメラで、野生動物の観察や学術調査に使用されているセンサーカメラ。森の中に入って、けもの道や食痕などから、動物の通り道を推理して、カメラを仕掛けます。
動物たちには夜に行動するものたちがたくさんいます。ライトを使った観察方法を実践し、野生動物に近づいてみましょう。
この日本列島の人々は野生動物とどのように接してきたのか。その動物観や政策はどのように変わってきたのか。通史から人と動物の関係をひも解きます。
里山はいわば野生動物と人との境界線。その里山での暮らしから 見えてきた野生生物の実情をお伝えします。
狩猟の第一歩は、野生動物の痕跡を読むところから。フィールドに出て生き物の気配を感じる旅にお連れします。
野生動物に関するプログラムを企画・実施する際の「伝える」コツを学びます。
テーマに基づいてグループで伝え方を考え、実際にフィールドで伝えてみる体験をします。
立場が違うと、見え方やできることも変わってきます。いくつか の例をお話しした後、自分なりのIP像を描いてみましょう。
野生の鹿や猪の皮を引き取り、“革”に加工している工場が東京・墨田区にあります。実際に活用に取り組む猟師と革工場長から、皮はぎ技術を学び、恵みの有効利用への第一歩へ。
人と野生動物の関わり方に、「野生動物の恵みをいただく」形があります。野生鳥獣の肉=ジビエ調理に挑戦です。
スケジュール
1日目 1/10(土)
12:30 受付開始
20:00 実習終了
2日目 1/11(日)
9:00 開講
20:00 講習終了
3日目 1/12(月・祝)
9:00 開講
14:30 講習終了
※スケジュール・内容は天候やその他の事情によって変更する場合があります
これまでの野生動物インタープリター研修会の様子