[2012.12.7-9]野生動物インタープリター研修会《中級》inかながわ
狩猟や獣害の実情と現場に触れることで、野生動物観を深め、アプローチするインタープリター研修のステップアップ編です。学生割引価格ありです!
田畑や山林での食害など、ヒトと野生動物の境界線が複雑化する中、野生動物との関係性は、今後どのように考えたらよいのか?
今回の講習では、経験豊かな講師とともに、インタープリテーションという観点から、野生動物の保護管理や共生の意識を深めます。テーマには“狩猟”もワークにあることが今回の研修の特徴。駆除や管理という対策では捉えきれない野生動物との関係を、社会の課題として改めて 認識し、伝えるスキルを身につけましょう。
みなさまのご参加をお待ちしています。
前回の野生動物インタープリター研修会の様子はこちら
野生動物インタープリター《初級》の内容はこちら。初級を受講していなくても中級は受講可能です。
インタープリターと森づくりという多様なアプローチをもつ井戸氏が猟の実情を語る。
インタープリテーション協会・会長で、野生動物に関するエコツーリズムの経験豊富な小林氏。
野生動物インタープリター研修会《中級》in神奈川
【日 時】2012年12月7日(金)~9日(日)
【場 所】篠原の里センター(神奈川県相模原市緑区牧野2881)
【参加費】学生割引:20,000円、エコセン会員:25,000円、一般:27,000円
(現地までの交通費、宿泊・食費、交流会費は含みません)
*宿泊費:篠原の里センター 1泊 3,200円
【主 催】NPO法人 日本エコツーリズムセンター
【申込み】下記の申込みフォームよりお申込ください。
※この研修は一般社団法人セブン-イレブン記念財団の公募助成を受けて実施しています。
野生動物インタープリター研修会《中級》inかながわ 実施レポート
中央線高尾駅をふた駅ほど過ぎた藤野駅。ここからバスで30分かけて行ったところに、会場の 篠原の里センターはあります。平成15年に廃校になった小学校を宿泊や子育て施設として活用し、地域活性化の活動をしています。地元民の方々だけでなく、移住した方たちも一緒に、有機農業や民家を開放して芸術展や食べ物の販売などを行なうなど様々な取り組みで人が集まっています。のどかな環境の中での新しい取り組みが活発になる一方、獣害被害の報告もあり、人と野生動物の共生を見つめる研修会にはぴったりです。
【一日目】
[セッション1:目的と目標]
2012年 2月および10月の初級編から引き続きの参加の人、学生さん、自然学校スタッフ、一般企業の社員、県職員や農業を始めようという若者など、、、さまざまなバックグラウンドの12名が集まりました。エコセンにとっても初の【中級編】。いつもに増して、真剣な雰囲気で始まりました。
[セッション2:動物と人間および獣害の発生]
人と動物との関係性が希薄になっている時代。かつて人間は、自家消費のために少数頭で家畜を飼っているなど動物は身近な存在でした。しかし今は、「人間が関わらないことがベター」との見方もあり、「怖~い」もしくは「可愛い~!」という動物観が見られます。そんな中、日本各所で報告されている獣害。実害という問題だけでなく、街中と里山での認識の違いなどを学びました。
[セッション3:猟師になる]
静岡のホールアース自然学校でスタッフとして働くかたわら、猟師の免許を取得した井戸さん。国の野生動物管理にも携わり狩猟の指導も行ないます。
まずは野外でワナ猟のデモンストレーション。教室に戻ってからは、免許取得や被害もしくは猟師の実情、地域での役割などの講義を受け、多角的な捉え方で狩猟を知ることができました。
[セッション4:ジビエを体験する]
狩猟を始めて家庭の自給率が上がったという井戸さんオリジナルレシピをもとに、シカ肉・イノシシ肉を参加者みんなで調理。食べるだけでなく、それぞれの肉の特長や栄養面などもしっかり頭に叩き込んでから、シッカりいただきました。
[セッション5:インタープリテーション論]
見えるものを使って見えないもの・ことを伝えるインタープリテーション。初級では、実演をもとに伝えることを体験しましたが、 中級では野生動物そのものだけでなく、私たち人間との関係性や獣害に対して立場の違う人々にどのように伝えていくかということがポイントになっていました。 これは、獣害と野生動物の問題を社会全体の課題として捉え、対策を講じていく際に必要な考え方だとエコセンでは思っています。 国内外のフィールドで研究者として教育者として現場を踏んで様々な人や事情と関わりを持ってきた小林さんの言葉には、卓越した説得力がありました。 フィールドにも出かけ、さまざまな動物たちの足跡を見つけました。
[セッション6:獣害に取り組む地域の事例]
午後は外に出て、NPO法人篠原の里の農業部長・佐藤治男さんにお話を伺いました。農地を貸し出して有機農法を実践しています。イノシシたちがやってくるので、農地を柵でぐるっと囲う。イノシシは手薄なところを見つけて侵入。またそこを補修する。まさにイタチゴッコです。
まるで耕運機で耕したようなこの場所はイノシシが土中の餌を求めて掘り返したあと。
のどかな風景の中、電気柵が点にそびえる。
その後、校舎に戻って丹沢自然学校の吉田直哉さんに丹沢のシカ被害とその対策についてお話いただきました。シカの食害による、この数10年の劇的な変化に閉口してしまいました。
[セッション7:ガイドのスキルと配慮]
自然環境、野生生物との関係性に配慮するべきガイドのスキルについて学びました。受講者からは「改めて聞かれるとわからない部分やしっかり整理されていないことをきちんと示してくれたもらえてよかった」という意見が出るほど、分かっているようで体系立てて配慮できてない部分。講師の広瀬氏はじめそれぞれの体験や意見も交えることで、さまざまな可能性がある自然と地域を相手にするガイドとしての適性に近づきました。
[・・・・夜は交流タイム・・・・]
地域の方も参加して、獣害に限らない地域の現状などいろいろお話いただいたりなど、夜中まで盛り上がりました。
[セッション8:ワイルドライフマネジメントの考え方]
さまざまな要素が混ざり合う野生動物管理。その複雑さについて紐解いたあと、テーマに分かれてグループディスカッション。全体を一気に捉えると途方に暮れてしまうことも、ひとつひとつ紐解いて深めると道すじが見えてくるようでした。
[セッション9:ワイルドライフインタープリターに求められるもの]
「一緒に議論しているほうが、ぐっぐっと進んでいるかんじ」と小林さんが言うように、野生動物との関係性、獣害を語るインタープリテーションの世界は、今まさに起きている問題をとらえ、新しい地平を拓いていく途上こそがフィールドなのでした。
参加者の感想
講習内容
○インタープリテーション論
○ガイドのスキルと配慮
○獣害とは何か
○獣害に取り組む各地の事例
○現役猟師が語る「猟師になる」
○ ジビエ体験
○野生動物マネジメント
○野生動物インタープリターに求められるもの
講師
広瀬敏通 |
国内で最初の自然学校であるホールアース自然学校を1982年に創設。自然学校やエコツーリズムの第一人者として国内外で活躍。人材育成、地域つくりの専門家。国土審議会、中央環境審議会など歴任。自然学校研究所主宰、日本エコツーリズムセンター代表理事。
[日本エコツーリズムセンター代表理事/一般社団法人RQ災害教育センター 代表理事] |
小林毅 |
(財)日本自然保護協会主任研究員、(株)自然教育研究センター代表などを経て、現職。一環してビジターセンターのインタープリテーション、インタープリターの養成を手がけてきた。野生動物を素材としたエコツーリズムを国内外で実施。
[帝京科学大学アニマルサイエンス科 教授/インタープリテーション(IP)協会代表/日本エコツーリズムセンター理事] |
井戸直樹 |
第一種猟銃免許、罠猟免許を所持している、猟師3年目。ホールアース自然学校職員であり、半猟半ガイドの生活を営む。学生時代は「鹿と森の関係性」について研究しており、現在、狩猟活動や後継者不足にあえぐ狩猟界の次世代育成と同時に森づくり活動にも取り組んでいる。
[ホールアース自然学校職員] |
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