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 広瀬敏通アーカイブ(5)「被災地に行こう!」
 
広瀬敏通
 2011年07月10日 09:05 JST (参照数 6909回)  
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状態: オフライン


登録日: 2009年06月30日
投稿数: 20
「被災地に行こう!」記・2008年12月


被災地復興支援ツアー

史上最大の地盤崩壊が起きた岩手・宮城内陸地震の現場で先日、『震災エコツアー』が実施された。参加者は『被災地にツアーとして入るのは大丈夫なの?』とおずおず申し込んだという人も。1泊2日の行程を終えて駅で解散するときには、『ぜひ次には子どもをつれて参加したい』『もっと多くの人に同じ体験をしてほしい』と口々に湧き上がる思いを話した。被災地に入るというのはどんな意味があり、彼らは何を見たんだろう。

 宮城側の被災地は山間部の開拓地に集中した。ズタズタに寸断された道路を使えずにヘリで避難してきたものの、そのまま地区に帰れず、年1回の収穫期を迎えた特産イチゴやイワナの養殖場は無人のまま腐熟し、稚魚の大量死を迎えていた。厳しい開拓の暮らしに2重にのしかかった地区の生活や地場産業の被害。
ツアー参加者は大崩壊地を目の当たりにして、幾人もの証言者から話を聞いた。メディアでは報道されない地域の問題、行政の無理解。その中で藁をも掴むように苦闘する被災住民やくりこま高原自然学校の面々。震災の仕組みや被災時の話などを聞いた後に『どうしたらいいのか』議論は深夜まで及んだ。

報道で見聞きする平板な情報とは異なる、さまざまな思いを乗せた肉声との出会いは、本当の情報を得た実感を参加者に与えてくれた。


ボランティアを断らない

 4年前の中越地震の際、私は震度7を記録した川口町でボランティアセンター(以下、VC)で活動していた。その中越地震では長岡、小千谷、十日町など各地区にもVCが開設されたが、これらのVCが半月後には押し寄せるボランティアでパンクして、のきなみ受け入れを中止したのに対し、川口町は最後まで、日/1000人に近いボランティアを受け入れ続けた。

これは、覚悟をもってはるばる駆けつけてくれたボランティアの個々人がこの体験を下に災害大国日本に生きる個人として、生き方を変えうる機会だと私と仲間たちが考えたからだった。ボランティアが実際の活動には多すぎて参加できなくとも、欠かさずに続けた日4回の全員ミーティングは、少数の担当者だけの会議にせず、一日限りのボランティアでもみんな参加でき、さらに活動時間帯である昼にVC前の広場を埋めていた人々に対して、「川口町の現状とVCの活動」に関するタイムリーな情報を伝えてきた。

これによって、直接現場で活動する機会をもてなかった人々も川口町の貴重な情報を生でうることが出来、自分の地元に帰ってからも川口町の状況を伝えることも出来、ボランティアとしての自覚と意識を持ち続けられると各所から評価されてきた。

私は70年代末のカンボジア内戦時に現地で長く救援の活動に従事してきた。帰国後設立したホールアース自然学校では、さまざまな災害救援の現場にいち早く立って、人々がそれぞれの力で救援や復興に関わることができるような仕組みつくりに注力してきた。それと同時に災害現場が極めて優れた教育力を持つことにも注目してきた。


災害大国日本

火山国の日本の風土は変化に富む美しい森や湿原、温泉に恵まれ、普段はその恩恵にあずかっている。でも一方、ひとたび災害が発生すると、甚大な被害をもたらす。この被災地には、通常、ボランティアとしてしか入ることが出来ず、一般人がなんとか役に立ちたいと思っても、近づくことも適わない。


世界の1/400の陸地面積である日本列島が世界中で発生しているM6以上の大地震の20%を占める災害大国であるにもかかわらず、多くの日本人は災害現場からほんの少し離れただけで、悲惨な被災地とは無縁に立ち居振る舞い、想像力は圧倒的に欠如している。


現場で学ぶ災害教育

災害現場を身近に肌身で理解できるか否かが、いざという災害時での対処に大きく関係してくると私は考える。

それには毎年のように発生している災害現場を「教場」にした学びがとても効果的な『災害教育』になるはずだ。悲惨な災害現場を見学したり話を聞いたりすることには、倫理的な疑問も起こるだろうが、それでもなお私は幾多の経験から、災害教育こそは現場でなければならず、現場だからこそできると考える。安全面での配慮さえつけば、小中学生をバスで現地に入れて、VCなどを見学させ、被災住民やボランティア自身から災害の状況と災害地支援の話しを聞かせる。こうした活動は行政担当者に対しては災害時の効果的な官民協働による救援体制を、企業にはその組織力を生かした救援のケーススタディを提供できるだろう。

これまで、わが国で行われてきたのはおもに被害を未然に軽減する防災教育であり、災害発生時のダイナミックでカオスのような状況下での生き抜く能力を培う教育は体系的には取り組まれてこなかった。しかし、上記のような災害教育が実施されればその効果はきわめて高いだろう。

被災地は特別の聖地ではないし、それだけで危険なレッドゾーンでもない。そこには被災しつつも生き、暮らしている人々がいる。その人々と直に接し、自分ごととして震災を捉え返すことは、自分や身近な人を救う力にもなるだろう。知らん顔せずに『被災地に行こう!』。

(『東京ガス 環境コラム』に掲載)

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